3年目のバイオマス発電所はさらに進化していた!!

 2016/5/20(金)の1回目、2017/3/20(月)の2回目に続き、2018/10/23(火)3回目のバイオマス発電所ツアーにに参加してきた。前回から1年半が経ち、バイオマスエコシステムが順調に回り始めていた。

 

1回目のバイオマス発電所の記事はこちらです。

jumbokun.hatenablog.com

 

2回目のバイオマス発電所の記事はこちらです。

 

jumbokun.hatenablog.com

 さて前回との変更点は:

1)バイオマス集積基地(第2工場)に屋根付き乾燥場が完成していた。

 この屋根付き乾燥場ができたことによって、天候に左右されずに含水率が50%以下の燃料をバイオマス発電所に売ることができるようになった。以前は雨が降るとブルーシートを掛けて濡れるのを防いでいたが、それでは限度があった。バイオマス発電所は木質燃料の含水率が40%〜50%で5000円/t、それ以上の含水率なら減額、それ以下の含水率なら増額で買取る。よって売却する方としては、なるべく乾燥させて売却する方が得なのでわざわざこのような大きな乾燥場を建設したわけだ。

 この集積基地には、以下の木質副産物が持ち込まれる。

 1. 未利用材:山の木を伐採する際に、製品として使えない曲がった木、根本や木の

       先端部分など、搬出されずに山に残置されたもの。

 これらは主に真庭森林組合が行う枝打ちや間伐で出てくるもので森林組合が運営する集積場に集められて破砕されてから集積基地に持ち込まれる。

      真庭森林組合で使われていた破砕機(チョッパー)

 2. 端材(一般材):材料の型に沿って切り出した際に生じる余分な切れ端

 3. 樹皮:樹木の表皮(木の皮)

 これらは主に製材所から持ち込まれる。

 

 実は、この未利用材と一般材(端材、樹皮)は区別されていてFIT買取価格にも差がある。

 ・未利用材:32円/kwh

 ・一般材: 24円/kwh

つまり未利用材は山を健全に保つ為に伐採された間伐材であるので、買取価格を高く設定しており、一般材は木材製品を加工する時に排出されるものなので、買取価格が低くなっている。今までは燃料となる木材の出自は関係なかったが、今はそこに差をつけて山の健全化を促す方向になっている。現在、未利用材と一般材の比率は50:50である。

 ただし、発電所はFIT買取価格に差をつけているが、集積基地はどこから持ち込まれた木材でも一律5000円/tで買い取っている。

 そして、その5000円から500円を山主に還元している。3年間で山主に1億円を還元できたそうだ。これによって山主に山を維持管理していこうというモチベーションを持ってもらうことができる。

 実際、今年の夏の大雨で岡山県南部は甚大な被害を被ったが、真庭市では大きな土砂崩れは起きなかったそうだ。勿論、それがこのバイオマスサイクルで山が健全になった効果かどうかは検証できていないが、大きな被害が出なかったことは事実である。(でもかなり危険な状況ではあったようだが)

 

 2)木質燃料の外販

 前回の訪問時から集積基地に集まった木質燃料の外販は始まっていたが、現在、真庭バイオマス発電所には年間36,000トン提供しているが、さらに年間20,000トンを外販している。販売価格は真庭バイオマス発電所より若干安く卸しているらしいが、輸送料が掛かるので、外販先の発電所は真庭より高く買っているはずである。

 真庭市は自前の発電所で使えきれない分を売っているので問題はないが、外販先は高い木質燃料を買っており、それで利益を出すのは大変だろう。

 外販先は、鳥取、赤穂、奈良、三重にあるバイオマス発電所。足りない分は海外からも購入しているようだ。この状況はFIT買取価格が高い内は採算が合うが、FIT買取価格が下がったらすぐに赤字になってしまう。 

  真庭はバイオマス発電所で儲けることが目的ではなく、未利用材を有効利用して林業を健全に運営するエコシステムを構築することが目標である。よって現状の10,000kwh の発電所を拡大する計画はない。

 

 3)3年目のバイオマス発電所の実績

3年目のバイオマス発電所の実績を推測してみる。今回は正確な数字が取れなかったので、一部推測で計算している。

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 前年と大きく変化したのはFIT買取単価だが、これは上記の未利用材と一般材の買取価格を使って、それぞれ50:50で使われたと想定して出した平均値である。

ただし買取単価については、購入している新電力会社(PPS)との秘密保持契約で正確な数字は教えてもらえなかった。正直これ以上の単価で買い取ってもらっていると思う。

しかし、買取単価28円だとしても7.4億円の粗利が出るので、純利益でも黒字は出ている。

 さらに売電している新電力会社の真庭バイオエネルギーは真庭市役所、多目的ホール及び市内の小学校への電力供給を中国電力の価格より安く販売して地域に還元している。電力の”地産地消”はさらに進んでいる。

 

 4)CLTは停滞気味

 前回訪問したCLT工場にも再度見学に行った。

 

 CLTについてはこちらの記事を参照ください。 

jumbokun.hatenablog.com

 訪問したCLT工場は2016年3月に完成して2年半が経過している。

 前回2017/3/20訪問時の生産量目標は:

  2016年   4,000m3

  2017年 12,000m3(予定)

  2018年 30,000m3(目標)

だったが、今回は:

  2016年   4,000m3

  2017年 12,000m3

  2018年 12,000m3(予定)

と停滞している。

 停滞している理由としては、耐火基準をクリアするのに時間が掛かったのと、大規模建築物への採用がまだないからだ。平成28年4月の法改正で中層建築物に使用可能となったが、実際にCLTを使った目玉になる建築物が建っていない。耐火基準のクリアが間に合っていれば、新国立競技場に使用する案もあったのだが。

 

 5)真庭市の人口

 2018/10/1現在の真庭市の人口は45,839人である。2013年9月に訪問した時は確か5万人を切ったところだったので、5年で5,000人減少している。ただし、最近は移住者も増えてきて、2018/4/1時点では44,260なので、半年で1,500人増加している。

 真庭市はこのバイオマス発電所で地名度を上げて人口減少に歯止めがかかりつつある。

 やはり、地域の特徴を出して売り出すことが大事だと思う。

 

では、では。