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CLT工場とCLTで建てられた「木テラス」を観てきた!

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2017/3/20(月)に岡山県真庭市久世駅に建てられたCLTモデル建築物「木テラス」のオープニングイベントに合わせて、同市にある銘建工業(株)のCLT工場の見学会に参加してきた。

1. CLTとは

 CLT (Cross Laminated Timber)とは、ひき板を並べた層を、板の繊維方向が層ごとに

 直交するように重ねて接着した大判のパネルの事である。

 1990年代からヨーロッパのオーストリアを中心に発展してきた木質構造材料で、日本

 でも2013年12月に「直交集成板」として日本農林規格(JAS)が制定された。

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  写真は3層のCLT。わかりにくいので、図で書くと:

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 この板と板の間に有害物質を含まない接着剤を塗り、10kg/cm2の加重を掛けて

 貼り合わせたものがCLTになる。

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 これが完成したCLT。標準サイズは12m x 3mのパネルで、プレハブのようにCLT工場

 内で窓枠やドアの部分を事前に加工してから運び、現地で組み立てる。

 写真は大判サイズのスギCLT。現在、日本国内ではスギを原料としたものを中心に

 CLTの開発を行っているが、写真のようにスギは見た目が黒いので、外側にヒノキを

 使ったヒノキスギ・ハイブリッドCLTも開発されてJASに制定されている。

 

2. CLTを使って高層階の建築物を建てる!

 世界に目を向けると、中・大規模施設、6〜10階建の集合住宅などがCLTを使って

 建てられている。

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  建物名:Stadhaus

  場所:イギリス ロンドン

  2009年に思考した9階建の分譲マンション。2〜9階の壁、床、天井、エレベータ

  ーシャフトにもCLTが使われている。

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  建物名:G3 shopping Resort Gerasdorf

  場所:オーストリア ウィーン

  2012年にオープンした大規模ショッピングモール。約6万m2の建物の屋根材と

  してCLTが8,000m3利用されている。

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  建物名:Via Cenni

  場所:イタリア ミラノ

  2013年に施工した9階建ての公営集合住宅。4棟で計124戸からなり、全ての階の

  壁、床、天井にCLTが利用されている。

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  建物名:高知おおとよ製材(株)社員寮

  場所:高知県長岡郡大豊町

  2014年に竣工した日本初のCLT構造による建物。

 

 さらにウィーンでは24階建てのCLTビルが建設予定であり、カナダのバンクーバー

 にあるブリティッシュ・コロンビア大学が18階建ての学生寮を建設予定である。

 高層ビルは鉄筋コンクリートでしか建てられないという時代は既に終わっている

 のだ。

 

3. CLTの利点

 1) 成長した木材資源の活用

 戦後の復興時に植林された山林が70年を経て収穫期を迎えている。

 日本の森林は、木の成長量が利用量を大きく上回っていて、成長量に見合った木材

 資源の有効な利用が求められている。

 各国の木の成長量と利用量を比べてみると:

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 日本の木材利用量は成長量の約1/5しかない。

 CLT建物は従来の木造建築よりも多くの木材を利用するため、伐採期を迎えた森林

 資源を有効活用できる。

 2) 優れた断熱性

 意外かもしれないが、木材はコンクリートに比べて10倍、鉄と比べると400倍

 以上もの高い断熱性を持っている。CLTは厚みを持った材料なので、夏は涼しく冬は

 暖かい快適な室内環境が実現できる。

 また、木材は燃える材料だが、一度火がついても炭化層が形成され、CLTのような

 厚い材料だと内部までなかなか燃えていかない。

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 3) 面で支える構造

 これまでの柱や梁などの木質構造材料とは異なり、大きな面として利用できる材料

 である。分厚い材料全体で構造を支えて、構造的に安定した建物が建てられる。

 振動台実験による性能検証も行われ、阪神・淡路大震災を再現した揺れに対しても

 大きな損傷なく、倒壊することもなかった。

 

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 2015年2月に行われた実大振動台実験。CLTを用いれば、5階建てでも十分な耐震性

 が確保できることが示された。

 4) 効率的で素早く建てられる

 ◯寸法安定性が高く扱いやすい

  木材は繊維方向によって収縮率が異なるが、CLTは材料を直交積層することで、

  お互いの層が変形を抑え合い、通常の木材より寸法変化が少なくなる。よって精度

  の高い加工が可能になり、施工性も高まることになる。

 ◯大判パネルで素早い施工

  大きな面材で部材点数が少なく、現場での施工が容易でスピーディーになる。

  また、工場でもパネルの製造と加工がされるため、現場での騒音や廃棄物も少なく

  できる。

 これはかなり重要で、今までのコンクリートの建築だと固まるまで待たないといけ

 ないので1ヶ月掛かっていたところを、事前に加工したCLTを持ち込んで建てると

 1日で組み上げることができるようになる。これで大幅な建設コストの削減ができ、

 かつ、これからの建設現場での人材不足にも対応できるようになる。

 

4. CLT工場

 銘建工業(株)のCLT工場は2016年3月に完成した。まだ稼働して1年しか経って

 いない出来立てホヤホヤの新工場だ。

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 敷地面積: 北6号地 12,930 m3

 建物面積: 北6号地製造棟 6,012m3 (管理棟を除く)

       北6号地加工棟 3,414m3

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 建設コストは約37億円。内50%が国の負担で建てられている。いかに国がCLTを

 プッシュしているかがわかる。

 プレスラインで標準サイズのCLTを製造して、隣の加工ラインで窓枠やドア回りなど

 の事前加工を行う。

 すごいのは、CLT工場で出た端材やプレーナーチップは、隣接したバイオマス発電所

 にあるサイロにつながった地下パイプで送られて燃料として売っている。 また、その

 逆にバイオマス発電所から排出された蒸気を買って木材乾燥に使っている(上記図

 を参照)。エネルギー効率をとことん上げることを考えて設計されている。

 生産量:2016年   4,000m3

     2017年 12,000m3(予定)

     2018年 30,000m3(目標)

 この工場がフル稼働するかは、今後のCLT建築の需要に掛かっている。

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 プレスラインの工程。ここで糊付けしてひき板を直交に積層する。積層した板は、

 隣のプレス機で10kg/cm2の圧力でプレスされる。

 

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 9層のCLT。1層3cmとして3cm X 9 = 27cmの厚さ。しかし石膏ボードと比べても

 意外と軽いので、大きいが取り回しは比較的楽だという。

 

5. CLT建築物「木テラス」

 見学は、3月20日(祝日)の「木テラス」のオープニングイベントに合わせて行われ

 た。

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 真庭市が実施したコンペに当選した中央の黒服の女性2人が設計と施工を担当。

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 ◯CLTの特性を活かすシンプルで効果的な構成

  大きな木板を精度よく製作できるCLTの特徴を活かし、できるだけ少ない「3枚の

  壁」で、できるだけ大きい「3mX12mの3枚の屋根板」を支えるシンプルで合理的

  な構造になっている。

  部材数を抑え、現場での建て方は半日で完了することができた。

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 壁も天井も全てCLTを使って建てられている。

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 ベンチに置かれている丸い「座布団」も勿論CLT!

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 中まできちんと木があるので、繰り抜いても問題なし。壁に穴を開けることで

 アクセントになっている。

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 テラスの近くにはCLTでできたサイクルスタンドも設置してある。

 

6. 何故、今CLTなのか?

 [1] 地産地消に立ち戻る

  日本は元々「木の国」である。伊勢神宮を見てもそうだが、20年毎の式年遷宮

  行いながら2000年以上も御神殿を守っている。世界最古の木造建築は築1300年の

  法隆寺だ。

  今、日本の山林は戦後の植林から70年を経て収穫期を迎えている。「地産地消」で

  日本の木をきちんと「始末」してあげる必要があるのではないか。

 [2] 次の震災の復興に備える

  東日本大震災の復興は遅々として進んでいない。原因の一つが資材不足だ。東京

  オリンピックと建設資材を取り合っている。このまま、もし次の震災が起こった

  ら、資材の困窮を目に見えている。

  例えば仮設住宅の部材をCLTで事前に製作しておき、災害時にすぐに建設すること

  もできる。CLTは今までの仮設住宅と違い、断熱性も優れているので、冷寒地でも

  建てられる。

 [3] 鉄筋コンクリート(RC構造)で1ヶ月の工期をCLTでわずか1日に短縮!

  CLTは型枠で固める時間なども取らず、また繰り抜きやカットも自在にできるため、

  コンクリートより使い勝手がいい。接合に使われる金具もシンプルで、設計、施工

  の省力化も期待できるなどいいこと尽くめだ。

  この効果は絶大で、大幅な建設コストの削減と人材不足に悩む建設業にパラダイム

  シフトを起こすことができる。

 

7. CLTの課題

 1) コスト

  現状はまだコンクリートに比べて、コストが高い。立方メートルあたり15万円の価格

  を半額にできれば価格的に対抗できる。量産化できる生産体制も大きなポイントにな

  る。

 2) 耐火性

  木は燃える材料である。建築基準法では4階以上が「1時間耐火」。5階以上が「2時間

  耐火」基準があり、火を点けてそれぞれ1時間、2時間燃やし続け、さらに自然と消え

  る(自鎮)ことが求められる。

  これらに対しては、モルタルや石膏ボードは薬剤などを入れて自鎮可能とし、法の

  クリアを目指している。3階以下の場合は、1時間の準耐火仕様となり、着火しても

 「燃えしろ(1分間に1ミリずつ炭化するので60ミリ以上)を確保しておけば設計できる

  という法律が来年成立する予定」だ。

 

 CLTは木材のイノベーションだ。これにITのイノベーション、農業のイノベーションなど

 を組み合わせることで、単純に鉄筋コンクリート建築物の置き換えではなく、新しい

 建築物を生み出すことが必要だ。

 これからもCLTを追っかけていく予定だ。

 

 では、では。

 

[追記]

4月14日に再び岡山に行ってきました。そしたら、岡山空港の保安検査場の台がCLT素材になっていました。やるな、岡山。

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