バイオマス発電所を観てきた!

5/20(金)に日帰りで岡山県真庭市にできたバイオマス発電所を観てきた。

真庭観光連盟が催行する”バイオマスツアー真庭”に個人参加してきたのだが、実は3年前にも参加している。今回の目玉は、1年前に稼動した真庭市バイオマス発電所だ。

発電出力10,000kWで、一般家庭の約22,000世帯分の発電量を誇る。

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1. バイオマス発電所がある真庭市について

集合場所の真庭市役所までは、岡山空港からレンタカーで約1時間、岡山自動車道中国自動車道を経由していく中国山脈の山中にある。

真庭市は、岡山県で一番大きな市だが、人口は48,400人と人口減少に悩む地方都市である。

 真庭市の山林面積は65,600haで内訳は人工林60%:天然林40%、人工林の内、ヒノキ72%:スギ22%の林業がメインの市である。ご多聞に漏れず、真庭市の山林も手入れが行き届かず、間伐材がそのまま山に残されている状態があった。また製材所から出る木屑も産廃として廃棄していた。それらを木質バイオマス発電所で処理して地域内でエネルギーを循環させようという壮大なプロジェクトだ。

 

2. 木質バイオマス発電所の現状

実は、現在全国で20か所以上で発電出力10,000kW以上の木質バイオマス発電所の建設が計画・進行中である。

何故このような大規模バイオマス発電所が建設されているかというと、再生エネルギー固定価格買取制度(FIT)で基準モデルを5,000kWにしたからである。

そこでFIT基準で再生エネルギー売電で参入を計画した企業・自治体は、燃料となる木質材の供給の目処も立てずに計画を進めたところが多い。現在、稼動を開始したバイオマス発電所では燃料となる木材が集まらず、稼働率が予定より上がらずに赤字になっているところが多い。

5,000kW級の発電所だと年間10万立法メートルもの木材(約6万トン)が必要になる。多くのバイオマス発電所ではこの規模の木材を集めることができず、稼働率が上がらない。

つまり10,000kW以上のバイオマス発電所はどこにでも作れるわけではないのだ。

 

3. 真庭バイオマス発電所は健全な供給サイクルで発電している

真庭地域には、森林資源だけでなく、原木市場、製材所、製品市場全てが揃っている。

1) 原木市場:3市場 (取扱量:年間12万立法メートル)

岡山県内の素材生産量は年間約33万立法メートル

2) 製材所: 30社 (木仕入量:年間約20万立法メートル)

          (製材品出荷量:年間約12万立法メートル)

*仕入ー出荷の差の8万立法メートルが木屑であり、これをバイオマス発電に活用している。

これらの木質系廃材に加え、山に残された間伐材を燃料とし、真庭バイオマス発電所は年間15万トンの木質バイオマスを使用して発電している。

 

このバイオマス発電に安定的に燃料を供給する真庭バイオマス集積基地(第2工場)が発電所と同じ真庭産業団地にある。

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この第2工場は2014年10月から発電用燃料の受入を開始した。年間約5万トンの発電用燃料の加工を行う。地域内外からも発電用燃料は集まり年間約15万トンの発電用燃料が集積される。

では、この工場で行う加工とは何か?それは破砕と乾燥である。

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この巨大な破砕機はカナダ製で、土がついた間伐材をそのまま破砕できる。日本製の破砕機は、土がついたままだと目詰まりしてダメだという。

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樹皮を除いた原木は、このチョッパーで破砕して燃料用のピンチップに加工する。

今までは、ヒノキのスライスチップは製紙用に(色が白いので)、スギのスライスチップは燃料用に販売していたが、ペーパーレス時代が本格して製紙の需要が減り、ヒノキのチップが製紙用に売れなくなってきている。それらの需要変動にも対応していかなくてはいけない。

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 写真に写っているのが、樹皮を破砕した山である。バイオマス発電所は原則含水率が50%以下の木質燃料しか買い取らない。原木を破砕するチップの含水率は30%以下なので、そのまま出荷できるが、樹皮や間伐材は含水率が50%以上あり、乾燥させて50%以下に減らしてからしか出荷できない。現状、野外で乾燥させているので、雨が降ると濡れてしまうので、雨が降るとシートをかけてなるべく濡れないようにしている。

本当は発電所も水分が多い樹皮や間伐材は買い取りたくないが、真庭バイオマスタウン構想はただ単に木材を燃やして売電するのが目的ではなく、山林の保護や地域林業がうまく回るようにするのが目的なので、樹皮や間伐材も燃料として買い取っている。

木質燃料の買取価格:

集積場での受入単価:5千円/t (木材タイプの区別なし)

 協議会費:    1千円/t

 輸送費:     1千円/t

 加工費:     3千円/t

発電所の買取価格: 1万円/t (含水率50%以下)

年間15万トンが発電用燃料とすると、年間7.5億円が木材や間伐材を持ち込んだ地域に還元され、発電所は年間15億円を燃料代として支払っている計算になる。

では、真庭バイオマス発電所は利益を出しているのか?

これを決めるのが、”稼働率”である。

 

4. 真庭バイオマス発電所の実績

では、稼動して1年の出来立てホヤホヤのバイオマス発電所を見ていこう。

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トラベリングストーカボイラー 

燃料は、ボイラの前壁より燃焼室内へ散布され、粒子の細かいものは燃焼室内で飛散中に乾燥・燃焼し、比較的粒子の粗いものは燃焼室内底部のストーカへ着床して、乾燥・燃焼を開始する。燃料は、ストーカが燃焼室の後方より前方へ緩やかに移動しながら前部の灰出口に到達するまでに燃焼を完結させますが、比較的ゆっくりとした燃焼であり、燃料の発熱量、含水率や形状への対応範囲が広いことが特長。

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木質チップ定量フィーダ

木質チップを定量供給する機械。右上の取入れ口からボイラーに供給される。

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 ボイラーの中を小窓から覗ける。これが灼熱地獄。

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蒸気復水器。タービンを回した蒸気を冷やして水に戻す。空冷式で建物の下にある大きなファンを回して蒸気を冷やす。

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 蒸気タービン。この左側に発電機がある。

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発電出力はきっちり1万kW出てました。

この内、1800kWを自己消費するので、実際の売電量は8200kWになる。

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受変電設備。この高架線が2キロ先の中国電力の電力線につながっていて売電している。ちなみに2キロ先の電力線に繋ぐのに4億円かかっている。

では、このバイオマス発電所の収支を見ていこう。

バイオマス発電のFIT買取単価:35円/kW

真庭バイオマス発電の売電量:8,200kWh

真庭バイオマス発電の稼働率:95% -> 年間330日

稼働率はこの1年間の実績である。当初の予定は70%だったが、それを大幅に上回っている。結局バイオマス発電所はどれだけ稼動したかが売上になるわけだから、これ以上の売上は望めない。

年間売上=売電量 X 稼動時間 X 買取単価

    =8,200kWh X 24h X 330日 X 35円/kW

    =23億円

先ほど発電所の燃料代を15億円と計算したので、粗利は約8億円になる。

これから経費を引いても十分黒字になっている。

ちなみにこの発電所は従業員15名ほどで運営している。

 

真庭バイオマス発電所の総事業費は41億円。その内補助金で21億円を賄っており、残りは銀行からの借り入れ等を行っているので、利益から返済をする必要はあるが、FIT買取価格が20年固定であれば、赤字になることはないだろう。

現在、稼働率95%で運営されているので、上記で計算した売上が最大になるので、今後も十分に木質燃料を供給できるかがカギになる。

真庭バイオマス発電所は、健全は供給サイクルの上で運営されている。

つまり真庭市は、災害にあって外部からの電力供給が止まっても自立できる市になったということだ。

羨ましいー。

 

では、では。